育休父さんの成長日誌

朝日新聞朝刊 家庭面 (毎週木曜)連載
脇田能宏担当分: 1997年10月2日〜1998年1月29日

199710/2主夫になった日
10/9名を贈る
10/16最後の出社日
10/23どっちが取る?
10/30ひなたぼっこ
11/6ウンチ
199711/13主夫の気持ち
11/20妻の一言
11/27いつもの一日
12/4子育ての報酬
12/11お呼び出し
12/18家事と子育て
199712/25保育園
19981/8どうして?
1/15住み慣れた街
1/22子育ての時間
1/29夫婦の道のり

【子育ての時間】

 僕が育児休業から復職して、もう九カ月が過ぎた。交代で保育園に送り迎えをする毎日をすごすと、育休の日々は育児の中の、ほんのいっときに過ぎないんだと痛感する。
 育休はせいぜい一年。保育園に通うのは六年。その後も子育ては続く。生まれたての赤ちゃんを育てるのは手がかかるから、もちろん育休制度はありがたいが、むしろその後の継続的な子育ての時間が問題だ。
 夫婦でフルタイムの会社勤めをしていると、子育ての時間が足りない。上の広基を預け始めた四年前は、保育園が午後六時半まで。八時間働いてから、これに間に合うように帰って来るためには、迎え当番は子供が起きる朝六時半には家を出なければならない。一方、送り当番の帰りは八時近くになる。広基が寝るのが九時ごろだから、あわただしく食事・ふろ・翌日の支度をしながらの一時間は、親子のふれあいの時間としてはゆとりに欠ける。
 尚紀が生まれた一年前には、ずいぶん状況はよくなった。保育園が七時までになり、僕の会社の拘束時間が三十分短くなったのだ。おかげで残業なしの日は、朝夕合わせて二時間半、夫婦そろって子供と接することができるようになった。
 一人で子供の相手をすると、どうしても家事の片手間になってしまう。二人がそろう時間が長くなると、子供と接する密度が格段に増すのだ。そのため、かなり楽にはなったが、それでもまだ、毎日子供をせかしている。「あと一時間なんとかなったら」と思う。
 共働き家庭の日々の子育てを助けてくれるのは、育休制度よりも、むしろ毎日勤務時間を短縮する育児時間制度の方だ。働き方としても、まとめて休んでブランクを作るより、短時間勤務でも働き続けた方が体が仕事を忘れない。
 しかし、残念ながら育児時間制度は日本ではまだ十分整備されていない。特に男性が自由に取れる企業はほとんどない。育児時間を取るのはたかだか数年、働く長さは三十年以上だ。こういうときにバックアップがある職場こそ、やる気を持ち、能率良く働き続けることができる。
 知人の男性の会社は、就業規則にない育児時間を彼に認めた。こういう柔軟で広い視点を持つ企業が増えて欲しいと願っている。

(電機メーカーエンジニア) イラストを見る

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