§2 男は忙しいから家事できない?? −男性の家事・育児を考える−
セマってみました 家庭の実状〈アンケート調査より〉
 3 調査結果  6. 妻の自由度と決定権

 家事や育児が男女間で公平に分担されれば、女性は男性と対等な条件で社会参加が行えるのだろうか? 女性と男性で、行動の自由度は変わらないのだろうか? また、家庭の運営・管理は主として女性によって担われている現状が明らかになってきたが、このように重要な役割を担っている女性は、家庭に関するさまざまな決定事項に関しても大きな決定権を持っているのだろうか。これらの点を確かめるために、さまざまな行動を決定する際の自由度と夫婦間の決定権のあり方を調査した。

1. 行動の自由度──女性の行動の自由度は少ない

 行動の自由度について調べたところ、ほとんどすべての項目に関して、男性より女性の方が行動の自由度が少ないことが分かった。

  [グラフを見る]

特に「夜の会合に出席する」「仕事で帰りが遅くなる」「外泊をする」という3項目については、男女差が大きく見られた。これら3項目はいずれも、夜の時間における「自由度」を示している。女性は夜の時間を自己判断だけでは使いにくく、配偶者の承諾が必要な場合が多いという現状が見えてくる。

 家庭生活を送る上で、夜の時間をどう使っていくかは大切なポイントである。ある意味では、配偶者と話し合いながら決めていくのが当然のことだろう。そのような視点から考えると、『妻のみ家庭』の男性の半数以上が夜の会合や残業を配偶者の意向を気にせずに自由に決め、実行し、また18.8%は外泊も自由にするという現実の方に問題があるともいえよう。

 そこで、どのような要因で女性の行動自由度が左右されているか分析した。女性と男性で自由度の差が大きかった「夜の会合に出席する」「仕事で帰りが遅くなる」「外泊をする」という3項目への回答に対して、「配偶者の承諾がないと実行できない」なら0点、「承諾を得る方が望ましい」なら1点、「承諾を得る必要はない」なら2点と得点を配分し、3項目の合計を回答者の「行動自由度得点」とした。この「行動自由度得点」がどのような条件によって左右されているかを調べた。結果は次のとおりである。
*マークの多いものが、行動自由度と強い関係の見られる項目である。

  性別            (***) r=0.4832
  就学前の子供がいるかどうか (***) r=0.2410
  妻自身の性別役割分業意識  (*)  r=0.1256
  家事分担度の高さ      (-)  r=0.0731
  妻の年収          (-)  r=0.0907    
  夫と妻の年収差       (-)  r=0.0404    


<子供の年齢による、男女の行動自由度の違い> グラフ:子供の年齢による、男女の行動自由度の違い

<妻自身の性別役割分業意識による、女性の行動自由度の違い>
グラフ:妻自身の性別役割分業意識による、女性の行動自由度の違い


これらの結果から、次のようなことが分かった。

  (1)女性の行動自由度は、男性の自由度より大変低い。
  (2)女性・男性とも、就学前の子供がいる場合は、行動自由度は低くなる。
  (3)妻自身の性別役割分業意識が強いと、妻の行動自由度は若干低くなる。    
  (4)家事分担度と妻の行動自由度との間には、強い関係は確認できない。
  (5)妻の行動自由度は、妻の収入や夫との収入差には、ほとんど左右されない。


 女性の行動自由度の低さは、女性の経済力には関係なく存在しているという点で、家事分担度・育児分担度とは違った側面が見られる。経済力よりはむしろ、性別役割分業意識による影響が認められる。就学前の子供がいる場合に、男女とも行動自由がある程度束縛されるのは当然だとしても、そうでない場合も女性の行動自由度の低さは明らかである。

 女性の行動自由度の低さは、単に女性が家事・育児責任を担っているからという理由だけなのかどうか、一考を要する問題である。実際の家事・育児労働の問題以外に、もっと根深い精神的・社会的拘束が存在するようにも思われる。

 『分担家庭』と『妻のみ家庭』を比較すると、平均して最も自由度が低いのは『妻のみ家庭』の女性で、最も自由度が高いのは『妻のみ家庭』の男性である。『妻のみ家庭』に比べると『分担家庭』の男性は「承諾を得る必要なはい」という回答が少なく、「夜の会合に出席する」「仕事で帰りが遅くなる」「外泊をする」の項目に関して、妻の都合と折り合いをつけようという姿勢がうかがえる。

 男性の行動自由度の高さが唯一認められなかったのは「新しい仕事を始める」である。男性は経済責任を担わされていることが多いため、「残業をする自由」や「一杯飲みに行く自由」はあっても「転職をする自由」はそれほど高くないということであろう。

2.家庭における決定権──高額な買い物になると、夫の決定権が増す

 「ボーナスの使い方」や「貯金の方法」に関しては、多くの家庭で妻が中心になって決めている。ところが、「自動車や家の購入」等、高額な買い物をする場合は夫の決定権がグンと大きくなっている。
 『分担家庭』と『妻のみ家庭』を比較すると、『分担家庭』では「妻と夫が同程度」という回答が多くなっている点が注目される。これは単に「分担家庭では、妻の発言権が強い」ということではない。事柄によって「これは妻の領分。これは夫の領分」と分けることが少なく、二人で話し合いをして決めるのが自然になっているようすがうかがえる。
 「子供の進路」に関しては、男女の間でほぼ等しく決定権が存在している。このグラフにはあらわれていないが、「子供の進路」に関しては「子供自身」という回答も多かった。

 Q.次の事柄について決める場合、あなたの家庭では主に誰の意見によって決まると思いますか。(問5)

グラフ:次の事柄について決める場合、あなたの家庭では主に誰の意見によって決まると思いますか


※調査票の質問の中で、家庭責任のあり方を分析する上で、特に参考になる結果が出ていないものについては、報告書の調査結果から除いているものがある。


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