育休父さんの成長日誌

朝日新聞朝刊 家庭面 (毎週木曜)連載
脇田能宏担当分: 1997年10月2日〜1998年1月29日

199710/2主夫になった日
10/9名を贈る
10/16最後の出社日
10/23どっちが取る?
10/30ひなたぼっこ
11/6ウンチ
199711/13主夫の気持ち
11/20妻の一言
11/27いつもの一日
12/4子育ての報酬
12/11お呼び出し
12/18家事と子育て
199712/25保育園
19981/8どうして?
1/15住み慣れた街
1/22子育ての時間
1/29夫婦の道のり

【お呼び出し】

 八月十二日、もうすぐ昼休みというとき、保育園から職場に電話が入った。尚紀の熱が三八度を超えたという。朝は軽くセキをしていたくらいだったのに。電話で妻と仕事の都合を確認しあう。二人とも急ぎの仕事があるが、少しましな僕が迎えに行くことにした。同僚に急用で帰るとメールを入れ、上司の了解を得て職場を後にする。歩きながらも、仕事の段取りが頭をよぎる。うーん、今週は厳しいなぁ。
 一般の保育園は、子供が病気だと預けられない。朝、調子が悪ければ登園できないし、登園してから具合が悪くなれば職場に連絡が入り、すぐ迎えに帰らなければならない。「およびだし」は保育園に子供を預ける家庭の宿命だ。
 最初は特に、いろんな病気にかかるから毎月のように「およびだし」がある。治るまで数日かかることも多く、年休が二十日あっても足りないくらいだ。祖父母に頼れる家庭もあるが、「長く」「男女とも」働く時代を迎え、祖父母が現役労働者であることも多い。それでなくても、祖父母にも独立した生活がある。我が家では、極力夫婦で対応するようにしている。
 子供の調子が悪いときは側にいてあげたいのが親心だが、仕事はまた別の都合で動いている。「どうしてもこの日は出なければ」という日もある。仮にそんな日が四日に一回なら、子供が年に二十日病気になると五日は都合がつかない。だから一人で対応すると仕事との両立は本当に厳しい。
 夫婦で育児をしていると、こんな時に融通がきく。四日に一回都合が悪いなら、夫婦両方の都合が悪いのは十六回に一回。交代で休むから、むりに休むのは結局三十二回に一回、年に一度もない。年休のやりくりも違ってくる。二人で分担すると苦労が十分の一になることがあるのだ。
 保育園に着くと、尚紀は保母さんに抱かれている。僕を見てにこっとしたのでひと安心だが、顔色は良くない。抱き取ってみるとかなり熱があるようだ。
 へにょっとした尚紀を抱きながら家に歩いていると、学校帰りの小学生と一緒になった。顔見知りの子が尚紀のことを心配してくれる。こんな時間に尚紀と二人で歩くのは久しぶりだ。育休の間のことをちょっと懐かしく思い出した。

(電機メーカーエンジニア) イラストを見る

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