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「男は忙しいから家事できない??」フォーラム記録 第一部

パネリスト・スピーチ:古川



 

家事する男の作り方(古川)

理論派と脱力系

これは育時連のセッションですが、育時連といえば世間では「育児男の溜まり場」 ということになっております。そこに溜まっている「育児男」ってどんな人? というのは皆さん興味がおありかなと思いますので、まずその辺の話をしたい と思います。

私が育時連に関わり始めたのは6年ほど前なのでそれ以前のことはあまり知らな いのですが、どうも昔は労働運動が大きな柱になっていたようです。その流れ もあって、そこに集っている人も、主張を持っている人・主張を模索している 人が多かったように思います。もちろん「子育て楽しい」「父親労働力が家庭 で必要」というのは基本にあるわけですが、「男は仕事、女は家庭を守るべき」 に対して「生活するためには家事育児が必要。男だって担うべき」という主張 を持っている。「べき」に対抗する「べき」ですね。

この人たちを私は「理論派」とひそかに名づけています。この理論派の男性、 話をしていてもとても魅力的な人たちなんですが、その配偶者の方をかいま見 たりすると、これまたそれを上回る個性的で魅力的な女性なんだなぁ・・・っ てのが今までの経験で感じているところでもあります。

この理論派とは別種?と思われる男性もちらほらみかけます。強い主義主張が あって「男の家事」をしてるわけじゃない。なんていうか、それ普通でしょう? ・・・ってノリの男性です。

「生活するためには家事育児が必要。男だって担うべき」っていう言葉も、彼 らには「生活するためには呼吸が必要。男だって呼吸すべき」って聞こえてる んじゃないかって、私には思えたりします。

私はこの人たちを「脱力系」と呼んでいます。「脱力」と言っても力がないと か考えが浅いわけではなく、ベースのところですごくしっかりと自分の基軸を 持っているんですが、口に出す主張が「べき」にならず「いろいろあっていい んじゃないですか?好きにするのが一番なんじゃないですか?」なんですね。 脱力系タイプが出てきてるということは、やはり社会が少しずつ変わって来て るのかな、と感じています。

ほんの二世代前まで、家事は生業と明確に分離されていませんでした。それが 高度成長期を境に勤労世帯が爆発的に増え、それにつれて「家事育児は女がす べき」という「べき」が世の中を席捲していきました。その「べき」に対抗し 乗り越えるために「男も家事育児をすべき」という「べき」が必要だったんじ ゃないかと思うんです。脱力系の出現を見ると「家事育児は女がすべき」の 「べき」が、もしかしたらすこし揺らいできたのかな、だから「べき」なしで 立ち得るようになったのかも、と思うとちょっとうれしい傾向ではあります。

人の意見を変える実験

さて、そうは言っても世の中の大多数の男性は上記の理論派でも脱力系でもな く「やらない派」なわけですから、この「やらない派」をどうやって変えてい こうかというのが大きな問題ですね。この問題解決のヒントになるかなと思い ますので、ある心理学の実験についてお話したいと思います。

ひところアメリカでは「人の意見はどうやって変えられるか」という実験がし きりに行われていました。この実験はフェスティンガーとカールスミスがおこ ないました。

被験者に実験室に来てもらいます。運動作業実験と称して、机に座って皿に12 個の糸巻きを入れ、12個入ったら皿を空っぽにして、それからまた糸巻きを入 れ、12個入ったらまた空っぽにして…みたいな単調でつまらない作業を 1時間やってもらいます。

作業が終わった後で、実験者は被験者に話します。

「これから同じ実験を繰り返しておこなうのですが、被験者にはあらかじめ、 この実験が楽しく快適なものであると知らせておきたい。ところが今日は実 験助手が休んでいるので、あなたに手伝ってもらえないでしょうか。 隣の部屋で待っている次の被験者に、作業は面白い、興味深い、楽しい、魅 力的だなどと話してくれるだけでいい。やってもらえればアルバイト料を払 います。」

このアルバイト料は、半分の被験者には「1ドル」を、残りの半分の被験者には 「20ドル」を提示します。

実は隣の部屋にいるのは実験者の仲間のサクラなのですが、作業の面白さを疑 って見せるこのサクラに向かって、被験者は一生懸命作業の面白さを話します。 その後で、実験者は被験者に面接して聞きます。

「作業は面白かったですか?」

実際のところ、作業は単調で面白いわけがありません。相手は実験者ですから、 被験者はもう嘘をつく必要はないのです。

ところが、ここで変化が現れます。被験者の中の何人かが「面白い作業でした」 といい始めるのです。頼まれたこととはいえ次の被験者に「面白い作業だ」と 説明してしまった、すでにおこなってしまった自分自身のその行動が、彼の現実 認識に影響を与え、単調な作業を面白かったことに変えてしまったのです。

しかもこの変化は、アルバイト料の多寡によって変わります。20ドルもらうこ とになっている人の認識はほとんど変わらず、1ドルもらうことになっている人 の認識が「面白い」の方に多く変わりました。

「20ドルもらうから、言われたとおりに説明しただけ。仕事だから面白いと説 明したけど、あれはウソ。実際は面白くなんか無い」これが20ドルもらうこと になっている人の頭の中です。

ところが1ドルもらうことになっている人は・・・1ドルで自分の良心を売れる 人はそういません。たった1ドルのために嘘をついたと自分で思いたくない彼は 「あれは嘘をついたんじゃない、実際にあの作業は面白かったじゃないか」と 現実認知をすり替え、「面白かったですよ」と答える行動を示したのです。

人は自分のやったことは肯定したいですからね。既にやった事実を変えること はできないから、自分の認識の方を変えるわけです。あれは面白かった、有意 義だった、君もいっぺんやってみなさい、と。

「家事育児をしない男性を変える」のも同じ手が使えそうです。なんでもいい から、だまくらかしてでもいいから、チョロッとやらせちゃう。とにかく手を 動かさせちゃう。まず「やった」という既成事実を作っちゃう。

威嚇してやらせるのはダメです。相手は「うるさく言うからしょうがなくやっ た」「無理矢理やらされた」と認識しちゃいます。そうすると態度変容は起り にくい。20ドルの人と同じです。「あれはしょうがなかったから」と自分の中 にいいわけができちゃうと、態度を変える必要がない。

あまり過度な威嚇も過度な報奨もあたえずに、気がついたらちょっとやってし まっていた・・・ってのがどうも効果的なようです。


【追伸】
「家事する男の作り方」といえば、そういう題名の本が出版されてます。

家事する男の作り方」  百世瑛衣乎著  出版文化社
(→育時連の書評はこちら)

パートナーをその気にさせるノウハウ満載で、なかなか役に立ちそうです!


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