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「男は忙しいから家事できない??」フォーラム記録 第一部パネリスト・スピーチ:井口 |
育児で会社を辞めました(井口耕二)井口です。今日は、女性ばかりの中に男性1人という、かなり厳しい状況におか れております。それだけでなく、隣では進行役をしている嫁さんの目が光ってい ますし(笑)。 まず、簡単に自己紹介をさせていただきます。 今、小さな会社をつくり、自宅で翻訳の仕事をしています。 育児転職以前は、石油会社に勤めていました。ずっと会社勤めをするつもりだったのです が、数年前に子どもが生まれ、その後の生活を予想してみると……これがどうに もならないんです。 当時は、嫁さんがドアツードアで片道1時間40分もかかる職 場だったため、嫁さんが保育園の送り迎えをするとしても、朝、保育園が開く7 時ちょうどに送っていって、ぎりぎり間に合うかどうか。夕方も、5時15分の定 時ぴったりに飛び出せば、保育園が閉まる7時になんとか間に合うかどうかとい う状態でした。 じゃあ、私が保育園の送迎をできるかというと、これがまた無理 なのです。私は通勤1時間ちょっとでしたが、仕事が、トラブルがあると何時に 帰れるか分からないというものでしたから。夕方、「お先に」と机を離れ、エレ ベーターを待っていると、後ろから「お〜い、電話」と呼ばれ、そのまま午前様 ということも珍しくなかったのです。とても、放っておけない「生もの」の子ど もを責任もって担当できる仕事ではありませんでした。 いろいろと方策を考え、検討した結果、最終的に選んだのが、私が会社を辞め、 自分で仕事を始めるという道です。そうすれば、時間的にやりくりがきくように なりますから。 これは、かなり珍しいことなので、会社内でも話題になったようです。「そうい うときは、ふつう、嫁さんが辞めるんじゃないのか」とも言われました。それに 対して「はい。ウチ、ふつうじゃありませんから」で納得してもらえたのは、ふ だんの行いのたまものなんでしょう、良くも悪くも(笑)。 また、他部署には、 「子育てのために会社を辞めたヤツがいる」と伝わったらしく、独立後、都心の お客さんのところを訪問したついでに、スーツを来て古巣をたずねていくと、 「お前、今ごろそんな格好でこんなところにいて大丈夫なのか? 子どもは?」 と聞かれることがよくありました。私は主夫になるために会社を辞めたんじゃな くて、時間のやりくりがきくように転職しただけなんですけどねぇ。 主夫といえば、他でも、そういう捉え方をされることがありました。珍しいパ ターンだということで翻訳雑誌のインタビューを受けたところ、「主夫をしてい るわけではない」と言っておいたのに、表題には「主夫」の文字が……。たしか に、保育園の送り迎えはほとんど私など、家事も育児も、世の中の男性一般より はやっていますが、それでも、嫁さんと比べると私のほうが少ないですけどねぇ。 それに司令塔は嫁さんなので、私は手足のようなものなんですが。 そうそう、世の中一般の男性よりも多いということで、ほめられることがよくあ るのですが、これがまた、嫁さんは気に入らないようです。「『毎日、保育園の 送り迎えをするとはすごい』とほめられるお母さんがどこにいるのか」というわ けです。もっともな意見です。ただ、それを私に言われても困りますよね。私が ほめているわけでも、ほめてくれと頼んでいるわけでもないんですから。 男は家事をしないように育てられているところで今日は、パネリスト中ただ一人の男性ということで、若干、男性擁護の 立場で話をさせていただきます。 家事・育児の分担をしない夫が多いということですが、それは、ある程度、仕方 のないことだと思うんです。小さいときから、父親は外で仕事、母親は家を守る という専業主婦のいる核家族の中で育ってきた人が多いのですから。 実は、このような社会というのは、戦後から今にいたる、歴史的には短い期間に 成立した形式です。もっと昔は、生活する家と仕事場が同一、あるいは接近して おり、家事・育児と仕事をきっちり分けることなどなかったはずなのです。それ が、専業主婦、核家族、通勤地獄などが社会的なキーワードとなったことからわ かるように、戦後、職住が分離され、男性は会社に通勤して働き、女性は家を守 るようになりました。このように歴史的には短い期間のことではありますが、こ れを我々の側から見れば、生まれてからず〜っと、父親は外で仕事、母親は家を 守るというパターンの中で育ってきているわけです。 それに、だいたい人間というものは、やらなくてすむことはやらずにすませたい と思うものです。これは、男性も女性も同じ。女性だって、家事をやらなくてす むなら、そのほうがいいでしょう? ただ、今は、社会的なこととかいろいろあ って、男性はやらなくてすむことが多いけど、女性がやらなくてすむことは少な いだけだと思うのです。この条件が逆だったら、きっと、「女性が家事をしな い!」っていう状態になっているはずです。 こういうふうに考えてくると、目の前にいる「家事・育児をしない夫」は、ごく ふつうの人間がなるようになっただけの人なのです。特に怠慢なわけでもなく、 悪意があるわけでもなく。 じゃあ、どのようにして、その「なるべくしてなった人」を変えていくかという と……これが難しいんですよね。今日は、この後の話を通じて、その辺りのヒン トが得られればいいなと思っています。 |
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