「規制改革推進3か年計画(改定)」と解説・感想

保育園を考える親の会では、かねてより、保育園分野における規制改革の流れに 警鐘をならしてきました。


☆しかし、時代の大きな流れのなか、平成14年3月29日、総合規制改革会議による 「規制改革推進3か年計画(改定)」が閣議決定しました。 その中の保育分野に、認可保育園のますますの規制緩和を進めるように 書かれている部分があります。
☆総合規制改革会議は、政府の諮問機関で経済学者や産業界のメンバーで 構成されています。これまでも、さまざまな規制緩和策を発表し、 厚生労働省や自治体の施策に強い影響力をもってきました。
☆特に気になる点について、閣議決定された内容<白い四角で囲んだ部分>に続き、 代表の普光院さんが解説と感想を書いています。



「規制改革推進3か年計画(改定)」
2)保育サービスの拡充と質的向上
ア 認可保育所基準の見直しの検討及びその周知徹底

 保育サービスの不足に早急に対応できる措置として、 認可保育所における受入れ児童数の増がある。 このため、特に公立保育所を中心に、待機児童の多い地域においては、 定員基準の弾力化等を一層推進する。 また、一定の設備にかかわる設置基準等については、 その見直しを検討する。さらに、分園の積極的促進を図ることにより、 サービスの質を確保しつつ供給量の拡大を図る。
【直ちに検討に着手、逐次実施】

 保育サービスの増加を抑制している要因として、地方公共団体が財政状況の制約の中で、 新たな認可保育所の運営費を捻出しにくいことが挙げられる。 他方、地方公共団体によっては、国の設置基準以上の基準を導入し、 補助のかさ上げを行っているため、 その財政負担が重くなり過ぎているという側面もある。
 限られた財源を有効に活用し、一人でも多くの子どもを認可保育所に入所させるためにも、 保育環境の質を下げることがあってはならないが、地方公共団体が合理的でない基準の上乗せや 補助のかさ上げをしないようにすることが望ましい。

 さらに、待機児童の多い地域における定員基準の弾力化、 認可基準等に適合した保育所についての迅速・的確な認可などにより、 保育需要があるにもかかわらず、認可保育所の供給を抑制しないことが必要である。 このため、既に実施された規制緩和措置については、地方公共団体に対し、 早期かつ逐次、周知徹底を図る。
【平成13年度中に一部措置、逐次実施】



●定員の弾力化
[解説]
 通常の保育園では、子ども1人当たりに最低基準以上の面積を確保できるよう 定員を決めている。それを最低基準ぎりぎりまで入園させることができるように 定員基準を緩和していこうということ。
[感想]
 すでに125%までの緩和(年度後半はそれを超えても可)が行われている。 「過密」は子どものストレスになり、事故にもつながる恐れがある。 現在、保育室面積の測り方は地域によって異なっているが、 家具スペースなども配慮して子どもが「過密」にならない面積基準に改善し、 算定方法を明確化することが必要では?
 また、近くの公園を園庭代わりにする園での2歳以上児の室内保育スペース(1.98平米)は あのままでよいのか?
[意見]
保育所の入所定員弾力化等に関する会からの2001年3月付意見書です。


●一定の設備にかかわる設置基準の見直し
[解説]
 設置基準のうち、調理室について、設置義務を撤廃しようという意見が 規制緩和委員会のころから繰り返し出されている。
[感想]
 アレルギー対応、離乳食、おやつや延長保育の補食の臨機応変なやりくり、 発達段階による食事時間のズレ、食育、行事とのからみ、 その他子どもに必要なさまざまな対応を考えると、 調理室がない保育園はかえって非効率だと思うのだが……。
[意見]
保育園の設置認可に関する会からの2000年3月付意見書です。


●分園
[解説]
 本園から30分以内の距離に本園と連携して運営する小規模な施設を運営する方式。

●補助のかさ上げをしないように
[解説]
 「補助のかさ上げ」とは、自治体が独自に行っている国基準よりも多い人員配置、 保育料の軽減のことで、これをやめるように言っている。 そうなると、首都圏の大半の地域で保育士人数が削られることになる。


イ 公立保育所の民間への運営委託等の促進
【平成13年度中に一部措置、逐次実施】

 公立保育所に関しては、社会福祉法人等が運営する認可保育所に比べ、 運営コストがかかるだけでなく、利用者のニーズへの迅速かつ的確に対応できていない。 このため、限られた財源を有効に活用し、かつ社会のニーズに応じた保育を実施するという観点から、 公立保育所の運営については、社会福祉法人やNPO、民間企業等へ 民間委託することも有効な処方箋である。
 また、第153回国会においてPFI法を改正し、行政財産に関する規制の緩和を行った。 介護施設と同様、PFI方式を活用することなどにより、学校の余裕教室等、 活用されていない公的施設・土地を積極的に活用して保育所にするなど、 潜在的資源に着目して公設民営を促進する。



●公立保育園の民間委託
[解説]
 コスト高と運営の硬直化を理由に政府諮問機関からは公立園の民間委託促進が 繰り返し言われている。公立園の運営を民間委託した場合、認可保育園であることには変わりないが、 職員はすべて入れ替わり、経営は民間事業者が行う。保育料基準は同じ。
[感想]
 確かに民間運営のメリットはあるが、コストの大幅削減を急ぐ自治体が、 民間保育を公立運営費の半分までも「買い叩いている」のは適切なのか?

●公設民営
[解説]
 民間で認可保育園を新しくつくる場合には、施設整備の初期投資がネックになる。 そこで、公(自治体)が施設を設け、運営は民間が行うという公設民営方式を 推し進めようということ。
[感想]
 良質な保育を長年続けてきた地域の認可外を、こういう方式で認可化できれば、 地域にとってのメリットは大きい。しかし、現在。事業者の選定は 資本を持った企業等に偏る傾向がある。


ウ 保育所への株式会社等の参入の促進
【平成13年度中に措置】

 民間企業が効率的な経営の結旺として得た剰余金が、 さらに保育の事業拡大のインセンティブを阻害しないよう、関係通達の見直しを図り、 会計処理の柔軟化を進める。



●剰余金の規制緩和
[解説]
 認可保育園は、そのコストの半分以上を公費で負担するものなので、 民間保育園でも支給された運営費の用途はきびしく決められている。 これをもっと柔軟にし、経営を工夫して余まらせたお金をほかに投資したり、 利潤として計上できるようにしようということ。
[感想]
 会計が自由になれば、企業等では経営努力をして利潤を上げようとするのは当然であり、 コストダウンの結果、保育士が低賃金のパートばかりになったり、 給食の質が低下したりということは十分に予測される。 公費が子どもたちの処遇向上に使われるように規制を設けることは必要。


エ 認可外保育施設に対する指導監督の徹底
【児童福祉法改正について平成13年度中に措置。
平成13年度から逐次実施】

 認可外保育施設には、実際に20万人以上の子どもが通っている。基本的には都市部に多いが、 沖縄は歴史的経緯もあり、認可外保育施設に通う子どもの数が、 認可保育所に通う子どもの数を上回っている。 認可外保育施設の中には認可保育所に匹敵する質の高さを誇るものもあれば、 いつ事故が起こってもおかしくない低レベルのものまで混在している。 こうした施設における乳幼児など社会的弱者の安全や人権を守ることは、 保育行政の重点事項となっている。
 このため、第153回国会において、児童福祉法(昭和22年法律第164号)の改正を行い、 認可外保育施設に対する地方公共団体への届出、毎年の運営状況の報告、 設備運営に係る掲示・利用者への書面交付を義務付けた。 また、地方公共団体は、毎年認可外保育施設に係る運営状況や立入調査結旺を公表することとし、 悪質な施設に対する勧告・公表を行うことができることとなった。 さらに、都道府県と市町村との連携も強化することとなった。 こうした法改正の趣旨を周知徹底するとともに、認可外保育施設に対する指導監督の徹底を図る。

 こうしたことに加え、保育所、保育ママ、地方公共団体における様々な単独施策等を活用し、 待機児童の多い都市を中心に受入児童数の増大を図る。




オ 保育所に関する情報公開、第三者評価の推進
【ガイドライン作成については平成13年度中に措置、
その他については平成14年度中に措置】

 認可保育所においてもその保育の質・内容は多様であり、 利用者が安心して保育所を選ぶことが可能になるだけでなく、 運営側もそれを参考に更なるサービスの質の向上が図れるよう、 現行法令を適切に運用し、経営主体にかかわらず、保育所の情報公開を進める。 また、第三者評価については、ガイドラインを作成し、 その取組を促進する仕組みを整備する。



●情報公開・第三者評価
[解説]
 利用者が適切な選択をすれば、事業者はサービスの質を上げていくという考え方。 利用者の適切な選択のためには、判断材料となる情報や評価結果の公開が大切だとされている。
[感想]
 情報公開・第三者評価は必要。しかし、これだけでは保育の質の確保は不可能。 適切な最低基準と、行政の指導が必要であることは明らか。


カ 保育所と幼稚園の施設共用化等による連携強化
【平成13年度中に措置】

 就学前児童の保育と教育の多様なニーズに的確に対応できるよう、 保育所と幼稚園等の教育施設との施設の共用化(文部省・厚生省による平成10年の指針)を 促進するとともに、保育所と幼稚園の連携事例を情報提供することなどにより、 運営や施設利用の面で一層連携を深める。 ただし、運営においては現在の親の就労や子育ての実態に即し、 社会のニーズにこたえるものとなるようにする。
 また、多様な保育ニーズにこたえる観点から、 幼稚園における預かり保育の拡充を図る。



●幼稚園の預かり保育
[解説]
 幼稚園で通常保育終了後に園児を預かること。
[感想]
 幼稚園には保育園の不足分をカバーしてもらいたい。 ただし、幼稚園は長時間保育するために必要な人員や設備を備えていない場合も多いので、 体制をもっと保育園化することが望まれる。


キ 保育士に関する諸規制の改革
【平成14年度中に措置】

 平成9年の児童福祉法の改正や平成11年の保育所保育指針の改訂等を踏まえ、 地域の子育て支援など時代の要請に沿った資質を持つ保育士を養成することができるよう、 保育士養成所(短大、大学、養成施設)における養成課程等について見直しを行った。
 さらに、養成課程の見直しと併せて、保育士の卒後研修についても、 保育士の質を維持・向上するといった視点から、研修内容をインターネットで提供すること等により、 現場の保育士が学びやすい仕組みを構築した。

 また、保育所に配置すべき保育士定数について、平成10年から一定範囲で短時間勤務の 保育士を充てることを認めたが、その後も、延長保育、休日保育、年度途中入所など、 保育需要が多様化かつ増加しており、これらに保育所が柔軟に対応できるようにする必要がある。 これは、いったん離職した保育士が再び保育現場で活躍できる環境を作ることにも資するものであり、 現在、短時間勤務保育士は2割以内としている規制の一層の緩和 について検討する。

 なお、第153回国会において、児童福祉法の改正が行われ、認可外保育施設を含めた 保育の質の向上のため、保育士の資格を国家資格とし、業務の定義、 知事による試験・登録の実施等に関する規定を整備し、 保育士でない者が保育士を称することを禁止する(保育士の名称独占等)等の措置を講じた。



●短時間勤務保育士の規制緩和
[解説]
 現行制度では、定数保育士の8割以上は常勤でなくてはならないが、この枠を廃そうというもの。
[意見]
 これに関しては親の会から厚生労働省宛に意見書を提出しています。
こちらをご覧下さい。



ク 保育サービスの利用者に対する直接補助方式の導入

 児童福祉法の改正により、平成10年4月から、 保護者が保育所を選択して利用できる仕組みに改めるとともに、 保育所も保護者の依頼を受けて、申込書の提出を代行できることとした。 しかしながら、市町村が審査事務を行い最終調整の上、保育所への入所決定を行う仕組みは、 改正前の制度と変わっていない。  こうした新しい入所方式の実施状況、待機児童の状況、 介護保険や障害者支援費方式の実施状況等を踏まえ、長期的には、 保護者が直接保育を希望する保育所に申し込み、当該保育所が審査・決定を行うことができないか、 その可否について検討する。 また、利用者と施設との直接契約を検討する際には、保育の質の確保に留意しつつ、 保育所に対する補助ではなく、 利用者への直接補助方式の導入ができないか、 その可否についても長期的に検討する。



●利用者への直接補助方式の導入
[解説]
 これは「バウチャー」とも言われる補助方式。どういう内容が想定されているのか不明。 介護保険のようなものか?市町村が入所決定を行っているのは、 保育の供給責任が行政にあるためだが、これを直接契約にすれば、 保育はいっそう民間サービス化する。保育市場化策。
[感想]
 現行の利用者・行政・施設トライアングル方式が廃されバウチャー・直接契約になったら
  • 施設への補助が廃され、経営は不安定に。
  • 保育の供給は市場原理に任され、施設がつぶれても利用者は文句は言えない。 市町村が介入しないので待機児はカウントできない。
  • 在宅サービスニーズも多い老人福祉や障害者福祉と異なり、 保育は施設ニーズが圧倒的に多数であるのに、資金を薄く広くバラまくことになれば、 最も求められている認可保育園の供給増はますます困難になる。
  • 行政責任は後退し、「いざというときは役所へ」という利用者の最後の砦はなくなる。 公的助成を受けていない施設で最低基準が守られないのは、 行政の指導権限が希薄であるためでもある。第三者評価や苦情解決のしくみだけでは、 利用者の権利保護は困難であることを実感している。
  • 入園も各園が自由に決定することになり、障害児、アレルギー児、 経済的その他の困難をかかえる家庭など、ケアにコストがかかる利用者、 施設にとってリスクの高い利用者は排除されていく恐れ。
  • 地域へのサービスなど無償の事業、公共性の高い事業は成り立ちにくくなる。
  • 補助金を含む保育料は「売り上げ」となり、事業者が自由に処分できる性質のお金になる。


ケ 放課後児童の受入体制の充実
【平成14年度から逐次実施】

 大都市周辺部を中心に、小学校低学年を中心とする子どもたちの放課後の受入体制が不足している。 このため、放課後児童クラブや地域のすべての児童に居場所を確保する事業など、 放課後児童の受入体制を計画的に整備する。その際には、学校の余裕教室等も活用し、 また、小規模な放課後児童クラブ(10人以上20人未満)への支援、 長時間の開設や学校週5日制に対応した土日祝日の開設の促進を図る。




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