分科会紹介

 沖縄は「全国一の長寿県」として知られるけれど、その他に実は「出生率全国一位(24年連続)」「離婚率全国一位(13年連続)」「未婚の母率全国一位」「婦女暴行犯罪の発生率全国一位」という実態があります。

 こういう状況は沖縄の男たちの成育歴と決して無関係ではありません。今沖縄でも男性の問題に気付き始めた人たちがいます。男性問題が沖縄でどのように扱われているか、メディアや行政での最近の動きを報告します。そして、本土でのメンズリブをいかに沖縄の現状に則した形にできるのか、どういう方向づけをしていくほうがいいのか、話し合いたいと思います。

 それによって、新たなメンズリブの視点が構築されるのでは…なんて気負っています。皆さんのお力添えをお願いしたいと思います。

 純沖縄の栄ちゃんと、にわかに沖縄に来ることが多くなった作家の蔦森樹さんの異色コンビがお相手します。

分科会報告

 去年の大阪の「男のフェスティバル」に参加して今年も是非参加したいと思っていました。ただ参加したいだけの僕が、大それたことに初めて自分のワ−クショップなるものを企画することになってしまいました。

 しかし、お陰様でいい経験をさせていただきました。参加していただいた皆さんどうもありがとうございました。

 最近、全国各地でメンズリブの動きが増えてきているのだけれど、沖縄ではどうなのだろうか。沖縄にもメンズリブや男性問題について語る場がほしい。そんなときこのワ−クショップの企画を勧めてくれたのが蔦森樹さんでした。

 蔦森さんとは去年のフェスティバルで知り合ってそれ以来の付き合いですが、蔦森さんはそれ以前から沖縄にちょくちょく来ていたようでした。蔦森さんは「俺なんか何もできないよ」と石のように動かない僕の意思を、あの蔦森流のやさしげなプレッシャ−で簡単に動かしてしまいました。そして、どうせやるならちょっと派手にやろう、ということで考えたのが沖縄の「ポスタ−」を貼ることでした。

 参加した皆さんに少しでも沖縄の雰囲気を味わってもらいたいという思いもありました。実際12枚のポスタ−を貼ったり、観光用パンフレットも約20種類準備しました。きわめつけに「りんけんバンド」の曲まで流しました。

 しかし当初、やっぱりほかの分科会にも興味がありましたので、自分のとこは資料だけ準備して「主催者はほかの分科会に参加しますので、資料をもらったら皆さんもほかの分科会へ参加して下さい」なんていう書き置きをしておくのもおもしろいよね、という話もありましたが、それはマズイということであきらめました。

 そんなこんなで一抹の不安もありましたが、40人近くもの方に参加していただいたことに感謝したいと思います。

 参加者については、沖縄に4ヵ月住んだことがあるという方や沖縄に友達がいるという方、沖縄出身者の町の近くに住んでいるという方など、それぞれの方がなにかしら沖縄に興味があって、そしてもちろん男性問題にも関心がある人たちが集まっていたように思いました。

 はじめに、最近沖縄でも男性問題に気づき始めた人たちがいることや、男性問題がどのように扱われているかなど、新聞の記事を資料にして最近の動きについて話しました。

 今年、地元紙の沖縄タイムスで「男に吹く風」という連載がありまして、この程ブックレットとして沖縄タイムス社から販売されましたが、実はこの連載のキッカケになったのが僕でした。沖縄では男性問題についての初めての連載だったと思います。

 これについては僕が出ている部分だけを資料に加えておきました。それから話のなかで僕自身がやってきたことも付け加えました。

 学生時代に女性問題に目覚めた現在のパ−トナ−の影響で本当の男女平等とは何か、ということを強く思い知らされたこと。それで結婚は事実婚(別姓夫婦)をしていること。この別姓がキッカケで講座の講師を依頼されるようになったことなど。

 那覇市の公民館で「共に暮らす」という講座があってそのなかの「女と男、妻と夫」というコマで他の別姓カップルの女性と二人で夫婦について話しました。それを沖縄タイムスの記者が取材して「男に吹く風」の連載に繋がったのです。

 去年は、沖縄県女性総合センタ−「てぃるる」で開催された男性学講座の一コマで「男らしさからの脱出、自分らしさを考える」というテ−マの講師を依頼され、その中で「男のフェスティバル」のことも紹介しましたが、受講者からは何の反応もなかったこと。

 受講者の皆さんは2時間目の「アイロンがけ」にしか興味がなかったようで、男性問題について全く反応がなかったことが自分にとってはショックで数日間、鬱状態になってしまったこと。

 男性問題について話してみたくて声をかけたこともありましたが「自分は男女平等というのは賛成しない」とか「妻に無理やり連れてこられただけなんだ」と気のない返事ばかりでした。

 それとは別に現在、地元紙の琉球新報で「くらしの中のジェンダ−話」というテ−マで僕を含めた4人(男2、女2)で連載中のリレ−エッセ−「窓をあければ。」についても紹介しました。これも資料として提供しました。

 また新聞に書くことで周囲の目が気になって怖さもあること、特に職場では話題にされないことで息苦しさを感じていることなども話しました。

 そして本土から来ている蔦森さんから見た沖縄についても話してもらいました。

 沖縄には基地問題や労働問題があること。ト−ト−メ−問題(長男が仏壇と財産をセットで相続する慣習、男性がいない場合は男系の近い親戚の男に相続させる。裁判にもなって法律的には女性でも継げるという判決がでたが、当の女性は親戚からの圧力が強く沖縄にいられなくなり本土に引越してしまった)や夫婦間暴力にまで話が及びました。

 そこで参加者からは「賃金の低さから生活の苦労があり、それが自己実現の低さになったり、基地があるために常に閉塞感に攻められ自らの力で生きているという満足感がなかったりしているのではないか」「厳しい生活環境は、女性の力を必要とする分、女性が中性化し、男は男を維持するために直接的な力に依存してしまうのではないか」などの意見がありました。

 確かに賃金は全国最下位のようです。失業率も8%を越えているという状況です。基地についてもいろいろな被害があるなか、借地料や基地内労働などの恩恵を受けて生活している人たちもいるので複雑に影響しているものと思います。

 そして沖縄の女は元気がいいと言われていますが、そのとおりで、それが男たちの暴力を生んでいるとすれば、やはり男らしさにとらわれたジェンダ−の問題なのです。

 どこも同じでしょうが、沖縄でも行政が主催する講座などに男性がほとんど来ない、ということについては、「低賃金のため余裕がないのではないか」「生きていくためのことを優先して、切実さが違うのではないか」との意見が出ました。

 平和運動には人が集まるのですが、これは生活に密着した切実な問題だからなのでしょう。「活動そのものが、反基地運動と結びつかないと盛り上がらないことに驚いた」との感想を漏らす方もいました。

 ジェンダ−の問題は生活そのもので根深いものがあって気づきにくい。それでもジェンダ−の問題で男性が集まれるようにするにはどう工夫すればよいのでしょうか。

 これについては「生活講座のように料理やアイロンがけなどを取り入れて、男性も来やすいものにする。そして興味をもった人たちで発展させていくという方法はどうか」「夫婦間暴力を問題と思っている当事者はいるのではないだろうか。殴ってしまうことを問題にして、自分のことを語る会、みたいなものをつくってはどうだろうか」などの提案をいただきました。

 何か具体的なテーマがあることで、ジェンダーへのとっかかりができるのではないか、ということです。

 さらには問題に気がついている人がいても「地方特有の村社会が気になって本当の自分を出せないのではないか。またコミュニティ−や場の雰囲気を壊してしまう怖さ、村八分にされる怖さがあるのではないか」という参加者からの意見もありました。

 それにたいして「匿名制にして参加してもらうという方法がある」という提案ももらいました。ただ、沖縄は本当に狭いところで、匿名制をやっていけるのかどうかは不安です。

 そのほか、たくさんの意見や提案などがありました。これからの沖縄のメンズリブや男性問題について本当に熱心に考えていただきましてありがとうございました。沖縄で役立てていきたいと思います。

メンズリブ沖縄グループ紹介

(企画申込時のプロフィールより)

 沖縄では、男性学や男性問題に出会える場がほとんどない。沖縄の男性にもメンズリブのことを理解してもらい、気軽に男性問題について語り合えるよう日々努力しているところであります。