特別企画 1999年の3冊

育時連メーリングリストのメンバーに、印象に残った本を選んでもらいました。

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松田正樹さん

1)「子育てと出会うとき」大日向雅美 著
  NHKブックス852 日本放送出版協会 
  1999年 970円+税

 女性であるとか男性であるとかにとらわれず、新しい世代に贈るメッセージが一杯詰まっている一冊です。今どきの母親についての考察は、女性ばかりでなく、男性にも一読の価値が大いにあります。中でもに第5章の「母性神話にふりまわされないために」は圧巻。
 また、うれしいことに「胸を張って紹介できる子育てをやっている日本の男性たちのグループ」の1つとして育時連のことをご紹介されていて(208頁)、4半世紀におよぶ大日向雅美氏のご研究とともに、970円+税で手にしてしまって良いのだろうか?と思わず感じてしまう1冊です。

2)「ジローとぼく」大島妙子 作・絵
  偕成社 1999年 1000円+税

 「子犬をひろった。なまえはジロー。ジローとぼくは、いつも一緒に寝てるんだ」で始まる楽しい絵本。ある朝「ぼく」が起きてみると、なんとジローが「ぼく」の朝御飯を食べていた。あわてて駆けつけると「こら!ジロー」って怒られた。大変だ。ぼくがジローで、ジローがぼくになったんだ・・・
 この絵本、時間つぶしに入った小さい書店で見かけ、松田は思わず買ってしまいました。その夜、息子と読みだすと彼のゲラゲラ笑いが止まらない。「ピー」というシェットランドシープドッグを飼っている彼にとっては、犬と人間が入れ替わっちゃうというストーリーがよほど楽しかったらしいのです。身近な題材から、こんなに素敵なお話が生まれるとは!大島妙子氏の今後の作品に、皆様もぜひ注目してみて下さい。

3)「他人とちがっても、いいじゃない」八坂裕子 著
  大和出版 1999年 1300円

 タイトルの「他人」は「ヒト」と読むそうで、「自分にしかない個性を育てる10のレッスン」という副題がついています。東武カルチュアスクールで会話クラスの講師をされている八坂裕子氏ならではの1冊で、読み進んで行くうちに、カウンセリングルームに居るように心が和らいでいくのです。
 実は、東京都立川市女性センター「アイム」のシンポジウムで松田は彼女と同席したことがあり、とてもさわやかで素敵な女性だったことを今でも覚えております。「恋愛リハーサル」(フォーユー出版)や「あなたに。」(集英社)などの著作もあり、もし学生時代にこれらの著作を拝読していたら、松田の恋愛観はおそらく変わったに違いないなと思っています。そして現在、松田が「働くお父さん」状態でいられるのも「他人とちがっても、いいじゃない」という彼女の言葉に大いに支えられているのです。

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片山拓史さん

1.小谷野敦『もてない男--恋愛論を超えて』
  (ちくま新書 /1999)

 あれだけMLで話題になった本なのに、誰も票を投じてませんね(^^)というわけで、古くからの知人として、ささやかながら一票。育時連には「もてない男」が多い、って噂は・・多分アタリでしょうねぇ。家事育児をやることで、女性一般から好評を得てやに下がっている部分は、私にも間違いなくあった(ある)しなぁ。それが家事育児に手を染めるきっかけになって、ってほど単純な人は少ない(いなくはない?)でしょうけれど。

  小谷野敦
  『江戸幻想批判--「江戸の性愛」礼賛論を撃つ』
  (新曜社 /1999)

 研究者としての小谷野氏が前著で評価されるのでは本人も不本意だろうから、こちらも挙げておきましょう(^^) 江戸時代は性的に開放された自由な社会であった、って礼賛(幻想)の危険さを、遊女・子供の人権の面から説いてます。こちらは多少育時連センスにもあう、非常にまともな主張です。

2.松浦寛『ユダヤ陰謀論の正体』
  (ちくま新書 /1999)

 題名の印象と異なり、れっきとした研究本です、これも。ユダヤ陰謀説のみならず、いわゆる「研究を装ったトンデモ本」が行っている、論旨を捻じ曲げるための翻訳・引用のテクニックの指摘が、具体的に説明されていて、楽しいです。父性や専業主婦論をもっともらしく語るトンデモ本も題材に入れて欲しかったな。

3.加納朋子『月曜日の水玉模様』
  (集英社 /1998)

 私の趣味、新本格推理から一冊。学級委員的OLの日常生活をつづる連作短編ユーモア・ミステリで、軽く楽しく読める本です。この著者、温かみのある登場人物が多いせいか、読後感がとてもよく、お気に入りです。以下、無理矢理育時連と結び付ける話。<木曜日の迷子案内>は、読んでいる途中で謎解きができました。育児に携わっている過程で、私も経験・実践したスキルであったので。

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JUNKOさん

1:光野有次著 バリアフリーをつくる 岩波新書

 これは、読み終わってはまた部分的に読み直したりしました。帯には「はじめからバリアのない物や街をつくればいい!」と書いてありますが、まさしくその通りですね。ながさき出てこいランドには一度は行ってみたいと思っています。

2:森絹江著 愛されなくていいんだよ ユック舎

 友人に紹介されて購入して読んだらすごく良くて、私の友人たちにも読んでほしいなと思って、また本屋へ行ったらもうなかったので、森さんの直筆サイン入りでまとめ買い。ぜんぶあげちゃって結局手元には最初の一冊が残っています。いつかお会いする機会があったら、この本にサインを入れていただきたいなと思っています(^^;

3:安積遊歩著 ねえ、自分を好きになろうよ!
  コウ・カウンセリングの会

 私っつうものは、つくづく自分が嫌いらしい(^^; 障害者として、とか女性として、ではなくて、人間として安積さんの生き方というのはとても素敵だと思うんですね。2年半前、障害者の全国集会に行ったときに彼女と夫・子どもを遠目でみて、そこにいるだけですごく存在感のある人だなぁと思いました。

3冊に絞れないので、もう一冊年末に読んだ本も・・・

4:司馬理英子訳 へんてこな贈り物 メディカル出版?

 作者はアメリカの方2人ですが、忘れました。出版社もうろ覚えです。学級崩壊の元凶だともされている、ADHD(注意欠陥/多動性障害)に関する本なのですが、分厚い割にとても読みやすい本でした。
 個性重視、ゆとり教育、などと言われますが、親や教師や地域の住民にゆとりがない状態ですね。

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山本 摂さん

1、江藤淳、「妻と私」 文芸春秋

 江藤淳氏の「遺書」と言われるものです。私が読んだのは月刊文芸春秋に掲載されたものですが本にもなっています。自分の仕事がどんな仕事なのかを考えさせられました。

2、柳美里、「自殺」、文芸春秋

 1995年に河出書房から出版された「柳美里の「自殺」」に大幅に加筆された文庫本。友人と話をしているうちに昔自分が何度か自殺未遂をしたことを思い出し、次の日に本屋で偶然見つけた。読んでいるうちにその頃の自分の感じが戻ってきたりして不思議な感じでした。でも、ずいぶん救われたかな。1995年のものはかなり「自殺」を肯定的に書いている印象なんですが、1999年に加筆された部分ではちょっと感じが変ってて「あぁ、この人も大人になっちゃったかなぁ」って感じでした。

3、京極夏彦、京極堂シリーズ
& 夢枕漠、「陰陽師」シリーズ

 今年は「陰陽師」にはまった1年でした。別に仕事で陰陽師をしているわけではないのですが、仕事上の直接的ではないヒントをずいぶん沢山もらいました。ちょっと肩の力が抜けてホッとしました。

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中坂達彦さん

1)「日本の社会保障」 岩波新書 広井良典

 総論で、自分の考えていたことと一致することが多かった。各論では問題あるかもしれないが、少子高齢化の中でいろんな政策論での分析は参考になりおもしろく読めた。お金が年金にかたよりすぎ、福祉にまわっていないことがよくわかった。

2)「地球環境報告 2」 岩波新書 石弘之

 確か学生の頃、1 を読んだが、その時は結構難しかった覚えがある。今回は、割と身近に感じて、すんなりと読めた。21世紀の地球が後世にとって大丈夫なのか、不安でたまらない。中国で海鮮料理を食べまくっていることに罪悪感を感じてしまった。

3)「カリスマ 中内功とダイエーの戦後」 日経BP 
  佐野眞一

 数年前、日経ビジネスに連載されていたのが単行本になった。今、日経新聞の「私の履歴書」欄で中内功が執筆しているが、この本に見る彼が生きてきた流通業界の戦後を通して、日本のダイナミックな戦後史が概観できると思う。育時連的に言えば、猛烈仕事人間が牛耳ってきた戦後50年はもう終わってもらって、次の50年は家庭も大事、仕事も大事で、経済成長至上主義でないバランス感覚のある50年史にしたいものだ。

番外 極道放浪記 1、2
幻灯社アウトロー文庫 浅田次郎

 くだらないと言えばくだらないが、私にはとにかくおもしろかった。


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