◎小泉総理の所信表明演説より抜粋
 私は、内閣を組織するに当たり、五人の女性閣僚を起用しました。これは、男女共同参画を真に実のあるものにしたいという思いからです。女性と男性が共に社会に貢献し、社会を活性化するために、仕事と子育ての両立は不可欠の条件です。これを積極的に支援するため、明確な目標と実現時期を定め、保育所の待機児童ゼロ作戦を推進し、必要な地域全てにおける放課後児童の受入体制を整備します。
 私は、二十一世紀に生きる子孫へ、恵み豊かな環境を確実に引き継ぎ、自然との共生が可能となる社会を実現したいと思います。

◎小泉総理の所信表明演説に対する質問
■民主党・新緑風会 勝木議員の代表質問
勝木議員
 次に、少子化対策についてお尋ねいたします。  小泉総理は所信表明演説で、保育所の待機児童の解消と放課後児童の受け入れ体制の整備については明確な目標を定めて推進すると言われております。総理の所信表明は総じて耳ざわりのいい言葉の羅列の感がありますが、たとえ耳ざわりがよくとも、空手形では国民は納得しません。保育所待機児童ゼロ作戦の具体的な達成年次、学童保育の充実に関する整備目標を明らかにしていただきたい。
 また、「新世紀維新」と銘打つのなら、せめて古くて新しい問題の幼稚園と保育所の一元化ぐらいはすぐにでも取り組むべきではありませんか。総理にこの場でお約束いただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣
 少子化対策についてですが、保育所待機児童ゼロ作戦、この問題は、政府としては、新エンゼルプランに基づき、保育所における低年齢児の受け入れ拡大、さらに放課後児童クラブの拡充に取り組んでいるところであります。現在、男女共同参画会議の専門調査会において、保育所の入所待機の解消や必要な地域すべてにおける放課後児童の受け入れ体制の整備に向けた方策について御審議いただいておりまして、その議論を踏まえつつ具体化していきたいと考えております。
 幼稚園と保育所の一元化についてですが、政府としては、各地域の実情に応じた幼稚園と保育所の設置、運営が可能となるよう、施設の共用化、保育内容、教育内容の整合性の確保など、双方の連携強化を進めております。今後とも、子供や家庭の多様な御要望に的確にこたえられるよう努めてまいりたいと思います。

■民主党・岡田かつや議員の質問 (2001/05/14 予算委員会)
岡田委員
 総理は、所信表明演説の中で、保育所の待機児童ゼロ作戦、あるいは放課後児童の受け入れ体制整備、こういうことを言われました。私は非常に評価をいたします。  具体的に、こういったことを進めるためにどのようなスケジュールを考えておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣
 これは、男女共同参画会議の専門調査会において今審議をいただいております。その中で、仕事と子育てを両立する上において、今言いました、保育所待機児童をゼロにするというのに対して非常に要望が強い、放課後児童の受け入れ体制整備、これは重点的に取り上げるということで、近いうちに、これはどのぐらい時間がかかるかわかりません、時期も明示して、所信表明どおり、実施に向けて着実な整備を進めていきたいと思います。  その具体的な時期とか目標につきましては、もう少し時間をいただきたいと思います。方針ははっきりしております。

岡田委員
 またまた具体案がないのは残念ですが、私ども、基本的方向は賛成ですから、もしいいものが出てくればもちろん協力していきたいというふうに思っています。  その上で、我が党の提案を二つ申し上げたいと思います。  一つは、無認可保育の話なんです。これは、スマイルマム事件というのがありましたけれども、無認可保育について、できたものについては、今、厚生省の方でも無認可施設に対する指導基準というのをおつくりになっていろいろ指導されている。 しかし、あるかないかというところの把握ができない仕組みになっております、無認可保育が存在するのか存在しないのか。 そういう意味で、我々は今、児童福祉法の一部改正によって届け出を義務づける、こういうことを考えているわけですけれども、その考え方について賛成いただけるでしょうか。

坂口厚生労働大臣
 無認可保育所の問題につきましては、御指摘のように、私も問題意識を持っております。現在のところ、これは届け出をしなくてもいいということになっているわけでございますから、岡田議員がおっしゃいましたよう に、どこでやられているかということがわからないケースもあるわけでございます。 したがいまして、それらの点につきましては、もう少しやはり全体で把握ができて、 指導すべきことは指導がきちっとできるような体制にしていかないといけないというふうに思って おりまして、事務当局の方に、その無認可保育所と言われております保育所のあり方について早急に検討するように今言っているところでございます。  名案がございましたら、またお聞かせをいただきたいと思います。

岡田委員
 届け出を義務づけるということはそう難しいことではございませんので、急いで検討していただきたいと思います。我々、法案を出しますので、ぜひ賛成をしていただきたいと思います。  もう一つは、育児休業制度の充実の話であります。  一つは、政府の方も法改正をお考えのようですが、子供の看護休暇の問題であります。 政府の御提案は、これを、事業者に対する努力規定を置いているにすぎないということでありますが、我々は、年間十日程度の看護休業というものを認 めるべきだという法案を用意しております。  そしてもう一点は、同じ法案の中で、今までの育児休業制度は一歳までですね、一回きり。 しかし我々は、もう少しそこを弾力的に、小学校に上がるまで の期間で複数回とれるような制度に変えるべきだ、こういう主張をしております。  この二つの点について、どのようにお考えでしょうか。

坂口厚生労働大臣
 政府の方も、御指摘のように、育児・介護休業法の改正法案というのを今国会に提出しているわけでございます。 今お話しいただきましたように、これは努力義務でございます。  ただ、これも、強制的にそういうふうにできるようにしようというのには、なかなか、そこの合意を得るのにはもう少し時間がかかるというふうに私は思っておりまして、やはり第一歩を踏み出すことが第一。 そして、何はともあれ、気兼ねをして休まなければならない、休みをとらなければならないということではなくて、みんながそのことに応援をしてもらうような雰囲気がその職場に出てくるということが大事だというふうに私は思っております。 そうしたことを含めて、まずスタートをするということが一番ではないかというふうに思います。  年齢の問題、一歳まででありますとかあるいは学校に行きますまでの問題でありますとか、年齢の問題もございますが、まずはともあれ第一歩を踏み出させていただいて、そして順次それを充実させていくという手順を踏ませていただきたい、そんなふうに思っているところでございます。

岡田委員
 私はそこを、基本的考え方は異なります。 第一歩を踏み出して順次やっていくというやり方ではなくて、ここは思い切って大きな一歩を踏み出す、こういうことじゃないかと思います。  どうして先進国の中で日本だけが、育児期間の女性の就業率ががくんと落ちて、いまだにM字型カーブを維持しているのか。先進国はみんなそういうのはもうなくなって台形になっている。つまり、子供ができても就業率は落ちない。それはよっぽど思い切ったことをしないと変わらないというふうに私は思っております。  そこの基本的考え方について、総理、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣
 女性の仕事は家事、育児というのはかなり前のことで、最近は女性も男性も家事、育児をしないとやっていけないということについては、もう若い世代では当たり前になってまいりました。  しかし、私以上の世代になると、育児で仕事を休むということに対して、必ずしも一般社会の理解度がそれほどでないというのが現実の中であると思います。それをどう変えていくかというのが、これから男女共同参画社会を実のあるものにしていく上において大事だと思っています。  こういう点は、今できるだけ、育児で仕事を休むにしても、一般が、男も、ああそれは大事なことだなと快く理解を示すような環境を整備していくのも大事だと思っております。

岡田委員
 私は、日本経済の活性化という点から見ても、能力ある女性がその能力に応じてきちんと働ける仕組みをつくるということは非常に大事なことだというふうに思っております。一歩一歩も大事ですけれども、そこはぜひ大きな一歩が踏み出せるように御努力をいただきたいというふうに思っております。